「スッポン」の歴史は長く、中国においては4000年ほど前から記録が。日本においても江戸時代中期ごろからすでに食べられていました。現在でも、「すっぽん鍋」「すっぽん雑炊」など、すっぽんは滋養強壮に良いとして親しまれています。
しかし、鶏や豚などとは異なり、すっぽんはあまり身近ではない食材。正直、「どんな生き物なの?」とよく知らない方はほとんどかと思います。ただ漠然と「すっぽん=亀の仲間」と、または「噛まれると危険」くらいにしか思っていないはずです。
そこで、今回はすっぽんの種類と生態、亀とどこが違うのか?について詳しくご説明していきましょう。
▶︎目次
1.すっぽんの種類
「すっぽん」と一括りにしていますが、実はいくつかの種類があります。日本に昔から生息する「在来種」もいれば、海外から紛れ込んできた「外来種」も。すっぽん業界もなかなかに大変なようです。では、すっぽんの種類を見ていきましょう。
キョクトウスッポン
日本に昔から生息しているのが「キョクトウスッポン」と呼ばれる種類。
別名「ニホンスッポン」とも、中国にも同じ種類が生息していて「シナスッポン」と呼ばれています。主に食用とされているのはこの種類で、すっぽんと言えばでまずイメージするもの。養殖場で育てられている種類もキョクトウスッポンになります。
昔は川や池など、至るところに生息していた種類ですが、最近では外来種が増えたことでキョクトウスッポンの住処が徐々に減ってきているそう。養殖されているだけに数は十分なものの、天然物はこれからさらに見られなくなるかもしれません。
ヒラタスッポン
東南アジアを中心に生息しているのが「ヒラタスッポン」という種類です。
キョクトウスッポンと比較して、全長30cm程度と少しだけ小ぶりなのが特徴。甲羅に比べて頭の比率が大きく、長方形のような体型をしています。日本にはペット用として輸入され、逃げだした個体が生息域を広げてきていて問題です。
タイコガシラスッポン
引用:NAVIまとめ
タイ西部を中心に、東南アジアに生息しているのが「タイコガシラスッポン」。
甲羅の大きさが最大140cmにもなる、すっぽんの中でも最大級の種類です。反対に、頭はとても小さく、ちぐはぐな見た目でどこか愛嬌があります。タイで食用として乱獲され、絶滅が危惧されている種類なので日本ではまず見られません。
その他のすっぽんたち
上記の他には、フロリダスッポンやマルスッポン、インドシナトゲスッポンなどと呼ばれる種類も。
ヒラタスッポンと同様に、日本にはペット用として輸入された種類で、逃げだした個体が生態系を破壊しているとの話もあります。すっぽんに限らず、もし何かしらのペットを育てるのであれば、飼い主として最後まで責任を持ちたいものです。
2.すっぽんの生態
「すっぽん」と聞いてまずイメージするのが「キョクトウスッポン」。さらに、ヒラタスッポンやタイコガシラスッポン、フロリダスッポンやマルスッポン、インドシナトゲスッポンなど様々な種類がいることに驚きです。では、すっぽんの生態をご説明しましょう。
生息域と環境
天然のすっぽんの生息域は中四国や九州など温暖な地域を中心に、関西や関東でも確認されています。基本的に川や池などに生息。雑食性ということから魚、貝類はもちろん食べられるものなら何でも食べます。時には水生植物さえ。
また、すっぽんの環境適応力は高く、あまり綺麗でない水質でも生きることが。ただし、気温によって体温の変化する「変温動物」で、水温が15度を下回ると冬眠します。冬眠期間は一切餌を食べないことから、生命力の強い生き物です。
臆病で俊敏
「噛み付く」イメージのあるすっぽんですが、実はかなり臆病な生き物。ちょっとした物音にも敏感で、水面から顔を覗かせては周囲を伺っています。養殖場を見学してみると分かりますが、少しでも人間の気配がすると1匹も上がってきません。
ちなみに、動きは俊敏で水中では水かきを使って器用に泳ぎます。また、肺呼吸をしているので、1日に何度かは水面に顔を出したり、日光浴をしたりします。ただ、地上でもある程度は走れるので、慣れていないと捕まえるのは難しいです。
噛み付くと離さない
すっぽんの代名詞でもある「噛みつき」。すっぽん自体に歯はないのですが、顎の力が強いので1度噛み付くとなかなか離しません。「雷がなっても離さない」と言われるほどで、個体によっては人間の指を噛みちぎるくらいの力を持っています。
すっぽんを捕まえるときは、後ろから甲羅の両はしを抑え込むのが鉄則。もし、すっぽんに噛まれたときは、無理に剥がそうとせずに水中にそっと戻してください。ただびっくりして噛み付いているだけなので、落ち着く環境におけば離すはずです。
3.亀との違い
すっぽんは「爬虫綱 カメ目 スッポン科」に属することから、亀と同じもののようなイメージがあります。しかし、すっぽんと亀を比較してみると至るところに違いが。特に、甲羅や歯、指は違います。では、亀との違いについてご紹介しましょう。
甲羅が柔らかい
亀の甲羅が硬いのに対して、すっぽんの甲羅部分はまるでゴムのように弾力があります。これは、すっぽんの甲羅部分の多くが「コラーゲン」によって形成されているため。すっぽん鍋などでも、プルプル食感の楽しめる甲羅部分は人気です。
歯を持たない
亀は種類によって歯を持っていることがあります。反対に、すっぽんはどの種類においても歯を持っていません。ただし、顎の力はすっぽんの方が強いのだとか。先述したように、すっぽんは個体によって人間の指を噛み切るくらいの力があります。
指が3本のみ
亀の指は5本ありますが、すっぽんの指は3本しかありません。亀は水陸両方で生活するのに対して、すっぽんは基本的に水中で生活しているため。すっぽんは水中でより泳ぎやすいよう、進化の過程で指を変化させてきたと考えられます。
4.まとめ
すっぽん鍋やすっぽん雑炊など、古くから親しまれてきた「すっぽん」。食材として誰しも知っているすっぽんですが、詳しい生態を知っている方は意外と少ないものです。まして、すっぽんに種類があったのには、驚いたのではないでしょうか?
食用として認識されているすっぽんは「キョクトウスッポン(ニホンスッポン)」と呼ばれる種類。その他、国内には「ヒラタスッポン」「フロリダスッポン」「マルスッポン」「インドシナトゲスッポン」などペット用として複数のすっぽんが輸入されています。
亀ともまた違った生態を持つスッポン。高級食材としてだけでなく、別の視点で意識してみても面白いかもしれません。
ちなみに、「長崎淡水 すっぽん養殖場」では業者向けだけでなく、一般の方向けに「切り身すっぽん(加工済み)」の販売も行っています。シンプルに捌いただけのすっぽんなので、鍋や焼き、揚げなど様々な調理に使えておすすめです。
2018年10月16日