すっぽんを取り扱う料理人、消費者の皆さま。すっぽん料理のプロだからこそ、目利きには特に注意を払っていることかと思います。しかし、すっぽんの小売というのはあまりなく、実際に目で見て、触って鮮度を確認するのは難しいものです。
その為、すっぽんの目利きで特に重要となるのが「どこの養殖場(業者)から仕入れるのか」です。というのも、すっぽん養殖場は全国にあり、業者によって生育環境に差があるため。「信頼できる業者=安心のすっぽん」であるためです。
そこで、今回は信頼できる業者の見分け方と、すっぽん養殖場の全国一覧(有名どころ)をまとめてみました。
▶︎目次
1.すっぽんの養殖環境を知る
すっぽんは比較的強い生き物なので、淡水であれば大抵の水質で生息できます。しかし、あくまで生息できるだけで、「品質」や「鮮度」を考えると適切な環境下で養殖される必要が。では、すっぽんの養殖環境についてご説明しましょう。
すっぽんは臆病な生き物
すっぽんはとても臆病な生き物です。音やにおいに敏感で、少しでも異常を感じるとすぐに身を隠すほど。実際に養殖場を見学すると分かりますが、「本当にすっぽんがいるの?」と疑いたくなるほど水中に息を潜めて出てこようとしません。
すっぽんにとって人間の存在、車や生活音などは大きなストレスに。当然、過度なストレスがかかると病気などかかりやすく、品質も落ちやすくなります。その為、すっぽん養殖場は「静か」な、人里から離れた場所にあることがほとんどです。
養殖環境は大きく2種類
すっぽんの養殖環境には大きく分けて2種類あります。
露地養殖
すっぽん本来の自然に近い環境下を再現して養殖する方法。自然環境に近いだけにストレスがかかりにくく、品質の高いすっぽんが育ちます。ただし、すっぽんは温度変化に敏感は「変温動物」なので、冬になると冬眠してしまいます。
冬眠中は餌を食べないので、出荷できるサイズにまで成長するには3〜4年はかかります。その為、安定した生産、出荷のしにくいのが露地養殖の問題点。これだけ手間暇がかかるだけに、すっぽん1kgあたりの価格もお高めになりがちです。
加温養殖
ボイラーや工場排熱(排水)などを利用し、すっぽんが冬眠しないよう水温をコントロールして養殖する方法。冬眠することがないので年中餌を食べさせることができ、露地養殖のおよそ半分の期間(1年〜2年)で出荷できます。
安定した出荷、安価な生産ができる反面、加温養殖ではすっぽんに一定のストレスのかかり続けることに。露地養殖と比較すると品質が下がりやすいのはもちろん、すっぽんならではの脂(コラーゲン)のノリが薄くなりやすいのです。
養殖は水作りが重要
すっぽん養殖でもっとも重要とされるのが「水質」です。水質と聞くと「綺麗な水」をイメージすると思いますが、すっぽん養殖において綺麗すぎる環境は逆効果。底まで透けるような綺麗な水質では、すっぽんが安心して隠れられません。
適切に管理された養殖場では水面が「緑色」をしています。これはアオコなどに代表される「植物性プランクトン」をあえて繁殖させているため。一見すると汚れているように見えますが、底に溜まった排泄物などは綺麗に掃除されています。
養殖場は国内が安心
すっぽんは鮮度が命の生き物です。すっぽん養殖場は国内外に多数存在していますが、海外から輸入されるものはすでに加工されたものがほとんど。適切に冷凍または真空パックされたものであっても、時間が経つほどに鮮度は落ちます。
もし、少しでも鮮度の、品質の高いものを選ぶのであれば、「生きたまま」のすっぽんを選ぶべき。国内の養殖場で生産されたものを選ぶべきです。また、仮に冷凍や真空パックであっても、時間のかからない国内産だと鮮度が保たれます。
2.信頼できる養殖場の見分け方
料理人としてすっぽんの鮮度、品質には興味があると思います。反対に、生産元である養殖場には目がいきにくいもの。しかし、養殖場の環境こそ鮮度、品質に影響しています。では、信頼のできる養殖場の見分け方をご紹介しましょう。
国内に養殖場がある
先述した通り、すっぽんの鮮度は「品質」に直結しています。その為、すっぽんを仕入れるのであれば「国内の養殖場」からがおすすすめ。「すっぽん 養殖場」と検索してみると、国内だけで10箇所以上の養殖場が表示されるはずです。
水作りにこだわっている
すっぽんは大抵の水質に適応できる生き物ですが、品質の高いものとなると「水作り」がとても大切です。植物性プランクトンは発生させつつも、排泄物は掃除されている。すっぽんにとって住みよい環境作りのされている養殖場が良いです。
また、「湧き水」や「温泉水」など、その土地ならではの水を利用したすっぽん養殖も盛んに行われています。「ここの水だからこう育つ!」というデータはないですが、土地によって生育状況にも差があるので比較してみても面白いでしょう。
生きたものを出荷している
当たり前のことですが、すっぽんは「生きたまま」がもっとも鮮度が高いです。しかし、養殖場によってはすっぽんを冷凍、真空パックにしてから出荷しているところも。その点、生きたままであれば自分で捌けて、鮮度抜群のまま調理できます。
1匹800g以上ある
通常、すっぽんが出荷されるまでには露地養殖で3〜4年、加温養殖で1年〜2年ほどかかります。ただ、期間はあくまで目安で、養殖場によって養殖期間、生育状況はまちまち。600g前後と小柄なまま出荷するところもあります。
しかし、より脂(コラーゲン)が乗っている、しっかりした肉質のものを提供するのであれば、少なくとも「800g以上」は欲しいところ。養殖場によって「何gが出荷基準」と定めているはずですから、確認してから注文するのがおすすめです。
生産者の顔が見える
すっぽん養殖場を選ぶ上で、もっとも大切と言えるのが「誰が生産しているのか」ということ。というのも、すっぽんも生き物なので、どれだけ熱意を持って養殖しているかが品質に大きく影響します。「お金になるから」だけでは不十分なのです。
機会があればぜひ生産者に連絡を取って、養殖場を直接見学して見てください。また、直接が難しいのであれば、ホームページ上の顔写真を、プロフィールやコメントをチェックするのでも。「信頼できる生産者=信頼できる養殖場」です。
3.すっぽん養殖場の全国一覧
すっぽんの養殖環境について、養殖場を選ぶポイントについてまとめてきました。しかし、いざすっぽん養殖場を選ぶとなると、「どこにすれば?」と迷ってしまうものです。そこで、全国のすっぽん養殖場から有名どころ10選を一覧にしてみました。
長崎淡水 すっぽん養殖場
長崎県西海市、海と山に囲まれた自然豊かな土地にあるのが「長崎淡水 すっぽん養殖場」。
すっぽん養殖一筋50年の代表が、手間暇かけたすっぽんは品質の整った1kgサイズのもののみ。自然環境に近い「露地養殖」でありながら、独自技術により1年を通して出荷が。生産量も安定しているので、大量注文も対応しています。
ナガセスッポン養殖場
2018年10月(調査時点)、「すっぽん 養殖場」と検索して結果1位表示されるのが「ナガセスッポン養殖場」。
すっぽんの成分を配合した健康食品「すっぽん球」「すっぽんオイル球」「生血球」などを主に製造・販売している養殖場です。ただ、一部旅館や料亭などの飲食店にも出荷しているようなので、興味があれば問い合わせてみると良いです。
(株)服部中村養鼈場
ナガセスッポン養殖場に次いで、検索上位表示(2018年10月時点)されるのが「(株)服部中村養鼈場」。
すっぽんの養殖環境として良いとされる、静岡県「浜名湖」にある養殖場です。ただし、「まるごとすっぽん(サプリ)」や「『壽寶』 和風仕立すっぽんスープ」「すっぽんクリームスープ」など、加工済みのすっぽんが主に製造・販売されています。
糸田すっぽん養殖場
福岡県田川郡糸田町の、自然豊かな場所にある養殖場が「糸田すっぽん養殖場」。
「露地養殖」と「加温養殖(ガラスハウス)」を組み合わせることで一年を通してすっぽん養殖を、出荷をしている養殖場。調理用のすっぽん養殖のみに特化しているだけに、安定した品質と生産量があり「国際配送」にも対応可能です。
下田鼈養殖場
関東地方最大級の「加温養殖」設備を導入しているのが「下田鼈養殖場」。
「恒温孵化室実験槽」などが完備されていて、すっぽんの飼育方法・飼料の研究機関としても機能しているほど。また、小売業者や料理店などに出荷するだけでなく、個人向けにペット用としてのすっぽん販売も行っている養殖場です。
耶馬溪すっぽん
大分県中津市の山国川周辺、日本新三景にも選ばれた「耶馬溪」にあるのが「耶馬溪すっぽん」。
耶馬溪の温泉を利用して養殖されたすっぽんは、特有の泥臭さがあまりないのが特徴です。また、主力商品である食べやすく捌かれた「すっぽん切り身セット」の他に、料理店や小売業者向けに「生きすっぽん」の発送にも対応しています。
有限会社 井寺スッポン養殖場
熊本県阿蘇、日本名水百選にも選ばれた「菊池水源流域」にあるのが「有限会社 井寺スッポン養殖場」。
菊池水源流域の地下水を利用してすっぽんを養殖。魚粉を主原料に、薬品等を一切使用せずに自社配合した飼料ですっぽんを育てています。ホームページ上に商品プランが記載されていないので、興味のある方は要問い合わせです。
兜すっぽん(東北すっぽんファーム)
青森県にある「すもも沢温泉郷」内に併設されているのが「兜すっぽん(東北すっぽんファーム)」
ミネラル成分の豊富な「モール泉」を源泉掛け流しで使用している養殖場です。温泉をそのまま利用することで独特の臭みが少なく、衛生的なすっぽんが生産できるのだとか。水炊き用など、主に「冷凍加工」されたものを取り扱っています。
江田島すっぽん
広島県産商品として「広島県産応援登録制度」にも登録されている「江田島すっぽん」。
生コンクリート製造業を中心に、副業としてすっぽん養殖も行っている業者です。料理店向けの「生きすっぽん」はもちろん、広島県産商品ということで「ふるさと納税制度」の対象にも。一風変わった返礼品としても利用されています。
小川スッポン養殖場
熊本県宇城市小川町の、より自然に近い環境で養殖をしているのが「小川スッポン養殖場」。
「露地養殖」が中心の養殖場なので、出荷できるサイズになるまでに3〜4年。丁寧な養殖で、品質の高いすっぽんが売りです。ただし、生簀が限られているのか生産量が少なく、秋冬など季節によっては売り切れ状態のこともあります。
4.まとめ
すっぽん料理はあまり家庭で出るものではなく、料亭や専門店などで食べるのが一般的です。特別なときに、特別な誰かと食べる特別な料理。だからこそ、料理人として、プロとして最高のすっぽん料理を提供したいのではないでしょうか?
最高の料理を提供するには、素材であるすっぽんの品質と鮮度が命。当然、すっぽんを生産している「すっぽん養殖場」からこだわりたいところです。養殖場選びで重要となるのが「養殖設備(環境)」と「誰が生産しているのか」の2つ。
紹介したすっぽん養殖場選びのポイントと全国一覧を参考にし、「信頼できる養殖場」を見つけてみましょう。
ちなみに、「長崎淡水 すっぽん養殖場」では1年を通して、安定したすっぽん養殖を行っています。自然に近い環境で育った高品質の「生きすっぽん」を、17,500円/5kg〜とお得な価格設定で販売しているのでぜひご利用ください。
2018年10月16日